※この記事には、筆者が業務で関わっているSSL証明書販売サイト「SSL.jp」のご案内を含みます(詳しくは記事末尾の「この記事を書いた人」をご覧ください)。
企業や団体の情報漏洩のニュースを目にする機会が増えています。「うちのサイトはSSL証明書を入れているから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、SSL証明書が守れるのは、セキュリティ対策のごく一部です。この記事では、SSL証明書で守れること・守れないことを整理し、情報漏洩を防ぐために本当に必要な対策をご紹介します。
この記事のポイント
- SSL証明書が守るのは「通信の途中」のデータ
- サーバーへの不正アクセスやパスワード漏れは、SSL証明書では防げない
- 情報漏洩対策は、SSL証明書と「ほかの対策」の組み合わせが大切
そもそもSSL証明書は何を守るもの?
SSL証明書は、ホームページを見ている人のパソコンやスマートフォンと、サイトのサーバーとの間の通信を暗号化(第三者に読めない形に変換)するためのものです。
SSL証明書がない通信は、内容が丸見えの「はがき」で送っているようなもの。SSL証明書を使うと、中身が見えない「封筒」に入れて送れるようになります。ただし、届いた先(サーバー)の金庫の鍵がかかっていなければ、封筒で送っても中身は盗まれてしまいます。
つまり、SSL証明書が守っているのは「送っている途中」だけ。届いた後のデータの守り方は、また別の対策が必要です。
SSL証明書で守れること・守れないこと
○ 守れること
- 通信の途中でデータを盗み見されること
- 通信の途中でデータを書き換えられること
- ドメインの持ち主ではない人が、同じアドレスでなりすますこと
× 守れないこと
- サーバーに保存されたデータの盗難
- パスワードの漏洩や使い回しによる不正ログイン
- 古いソフトの弱点(脆弱性)を狙った攻撃
- ウイルスやランサムウェアの感染
- 偽サイト(詐欺サイト)にだまされること
- 社内の人による持ち出し
守れること:通信の盗み見・書き換え
お問い合わせフォームに入力した名前やメールアドレス、ログイン時のパスワードなどは、SSL証明書で暗号化されることで、通信の途中で盗み見られたり書き換えられたりするのを防げます。特に、カフェなどの公衆Wi-Fiを使う場面では大きな効果があります。
守れないこと:サーバーに届いた後のデータ
フォームから送られた情報や顧客データは、サーバーやパソコンに保存されます。その保存先に不正アクセスされれば、SSL証明書があっても情報は漏れてしまいます。実際の情報漏洩の多くは、この「届いた後」の部分で起きています。
ブラウザのアドレス欄の鍵マーク(https)は「通信が暗号化されている」ことを示すものです。詐欺サイトでも、無料のSSL証明書を使って鍵マークを表示させているケースは珍しくありません。鍵マークがあるからといって、サイトの運営者が信頼できるとは限らない点に注意しましょう。
最近の情報漏洩はどこから起きている?
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」の2026年版では、組織向けの脅威として次のものが挙げられています。
| 順位 | 「組織」向け脅威 |
|---|---|
| 1位 | ランサム攻撃による被害 |
| 2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 |
| 3位 | AIの利用をめぐるサイバーリスク |
| 4位 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 |
| 5位 | 機密情報を狙った標的型攻撃 |
| 6位 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) |
| 7位 | 内部不正による情報漏えい等 |
| 8位 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 |
| 9位 | DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) |
| 10位 | ビジネスメール詐欺 |
出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html)を基に作成
見ていただくと分かるとおり、上位の脅威はいずれも、ウイルス感染、ソフトの弱点、だましのメール、人による持ち出しなど、SSL証明書だけでは防ぐことができないものです。情報漏洩を防ぐには、SSL証明書以外の対策が欠かせません。
中小企業が今日からできる情報漏洩対策
専門の担当者がいない会社でも、次のような基本的な対策で多くのリスクを減らせます。
- ソフトを最新の状態に保つ
WordPressやプラグイン、パソコンのOSなどは、更新のお知らせが来たら早めに適用しましょう。古いままだと、弱点を狙われやすくなります。 - パスワードを使い回さない・二段階認証を使う
サイトの管理画面やメールなどは、サービスごとに違うパスワードを設定し、可能なら二段階認証(パスワード+スマホでの確認など)を有効にしましょう。 - サイトの管理画面を守る
管理画面にアクセスできる場所を制限したり、ログインの試行回数を制限したりすると、不正ログインのリスクを減らせます。 - バックアップを取る
ランサムウェアなどでデータが使えなくなっても元に戻せるよう、定期的にバックアップを取り、別の場所に保管しておきましょう。 - 不審なメールに注意する
添付ファイルやリンクを開く前に、送信元や内容に不自然な点がないか確認する習慣をつけましょう。 - 委託先の管理体制を確認する
ホームページやシステムの管理を外部に任せている場合は、更新やバックアップをどのように行っているか確認しておくと安心です。 - SSL証明書の期限を管理する
SSL証明書の期限が切れると、サイトに警告が表示されます。有効期間は年々短くなっているため、自動更新の設定や期限の確認を忘れずに行いましょう。
それでもSSL証明書が必要な理由
SSL証明書は万能ではありませんが、だからといって不要なものではありません。今では、SSL証明書がないサイトはブラウザに「保護されていない通信」と表示され、訪れた人に不安を与えてしまいます。お問い合わせフォームなどで個人情報を受け取るサイトであれば、なおさら欠かせない対策です。
SSL証明書は、家でいえば「玄関の鍵」のような基本中の基本。そのうえで、窓の鍵(ソフトの更新)や金庫(データの保管)などの対策を組み合わせることで、はじめて情報漏洩のリスクを下げられます。
まとめ
- SSL証明書が守るのは「通信の途中」のデータ
- 情報漏洩の多くは、サーバーへの不正アクセスやパスワード漏れ、ウイルス感染など、SSL証明書では防げない部分から起きている
- 鍵マークがあっても、安全なサイトとは限らない
- SSL証明書を基本としたうえで、ソフトの更新・パスワード管理・バックアップなどを組み合わせることが大切
「SSL証明書を入れているから安心」ではなく、「SSL証明書は対策の入り口」と考えて、できるところから見直してみてください。
参考情報(2026年10月20日時点)
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」
https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html